30~40年も前になる。コンサート・ツアーは、今と違って80本、多いと120本、半年以上かかった。複数のアーティストを担当していたら、休むひまなど全くない。
ある時、ツアーに空き日があった。昨日広島で、明日は福山。『東京に戻って仕事がある』と嘘をついて、アーティストもスタッフも、イベンターに押し付けた。

映画を観た。『The Last Waltz』。
ザ・バンドは、ボブ・デュランをはじめ様々なアーティストとのセッションを20年以上続けていた。完璧に息の合った演奏は素晴らしかったが、生きる事に『疲れた』老人のようにも見えた。
理由はともかく、ザ・バンドは『The Last Waltz』でライブ活動に終止符を打った。
『俺たちは疲れちまったんだ この長い長いロード・ツアーに…』
ロビー・ロバートソンの言葉が、ざっくり突き刺さった。
せいぜい5年のくせに、私は疲れちまっていた。音楽って、ビジネスにしたとたんに疲れちまう…楽しいことなんか何にもない…それを思い知った頃だった。

Meiはまだスタイルを持たない。本人は不安だろうし、どうしてよいか分からないだろう。しかし、可能性を引き出すためには、今はそれで良い。
Meiはライブでは様々なトライを続けている。夏頃、ふとオープニングにSEを使おうと思った。ワルツが良いと直感的に考えた。映画音楽やパーシーフェイス、クラッシックまで探したが、しっくりくる曲がなかった。
思い出したのが『The Last Waltz』だった。
今は気づきもしないが、今後何十年も音楽を続けていると陥る心境を、知らず知らずのうちに体験させてやろうと企んだ。
泣きべそをかいたら「Meiは20歳の頃からThe Last Waltzを背負ってるんだ 今さら弱音を吐くな」と言ってやるつもりだ。
Meiは何も知らず、ラストワルツのテーマにのってステージに上がることになった。

https://youtu.be/fig1-6xZcqg